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ナレッジマネジメントとウェブログ

※以下の記事は、もともと『ウェブログ超入門!』の原稿として書かれたものです。しかし、ナレッジマネジメントをこの分量で説明するのはやや無理があるということで、このへんの話はカットとなりました(まあそれはそうですね)。以下、削除された「ウェブログによるナレッジマネジメント」に関する原稿を掲載します。したがって、内容的にはかなり専門的な内容となります。

■ウェブログはナレッジマネジメントを進める

●ナレッジマネジメントとSECIモデル

 ナレッジマネジメントは「知識管理」「知識経営」とも訳されます。組織の中にいる個人が一人ひとり持っている知識や、経験に基づいたノウハウなどを共有・交換し、創造的なものを生み出していくことです。また、そのための仕組みや手法もナレッジマネジメントと言われます。

 日本では、野中郁次郎教授・竹内弘高教授の『The Knowledge-Creating Company』が一九九五年に発表されてから有名になりました。特に野中教授の「SECI(セキ)モデル」は人間の知的創造活動をモデル化したものの一つです。

●暗黙知と形式知のダイナミックな変換

 SECIモデルを理解するには、まず「暗黙知」と「形式知」という用語を理解しておく必要があるでしょう。「暗黙知」はハンガリーの物理化学者・社会科学者のマイケル・ポラニーが提唱した概念で、「形式知」は野中教授が提唱したものです。野中教授の共著『知識創造の方法論』によると、

 ・暗黙知……知っていても言葉には変換できない経験的、身体的なアナログの知

       思い(信念)、視点、熟練、ノウハウなど

 ・形式知……暗黙知を言葉や体系にした、デジタルで共有可能な知

とまとめることができます。

 これらの二つの「知」が相互に変換されることによって、新たな知識が生まれてくるのです。「暗黙知」を言葉で表現して「形式知」に変え、「形式知」を分析・検索することで新たな「形式知」が生まれ、その「形式知」を消化すると個人の「暗黙知」に変わります。このプロセスを解明したのがSECIモデルなのです。

 SECIモデルは以下の四つのプロセスをたどります。

(1)Socialization(共同化)……暗黙知→暗黙知

 経験のある人から、経験のない人へ、共通の経験を共有することによって、言葉ではなく体験によって知識を伝えるプロセス。顧客との共体験も含まれます。

 これを促進する空間が「創出場」で、自由なふれあいと交流が特徴です。

(2)Externalization(表出化)……暗黙知→形式知

 個人が覚えた知識を、言葉や図表の形に表現していくプロセス。また、言葉を磨いて、新たな観点を持つ概念を生み出していきます。

 これを促進する空間が「対話場」で、発言の権限が与えられている必要があります。

(3)Combination(連結化)……形式知→形式知

 すでにある形式知を体系的に結びつけ、新たな形式知を生み出すプロセス。表現された概念を分析・結合して再構成していくプロセスでもあります。

 これを促進する空間が「システム場」で、IT技術の活躍する場所です。

(4)Internalization(内面化)……形式知→暗黙知

 行動し、実践することによって、得られた形式知を自分自身のものとして身体的に取り入れるプロセス。これはまた(1)の共同化プロセスへとつながっていきます。

 これを促進する空間が「実践場」で、実践によって知識につなげる空間です。

●ウェブログにおけるSECIモデル

 では、このSECIモデルをウェブログ・コミュニティに当てはめてみましょう。ただし、ウェブログ自体が文字を主体としているので、多少拡大解釈が必要かもしれません。

(1)S:共同化……暗黙知→暗黙知

 自分の実体験、他の人のウェブログやニュース記事を読むこと、掲示板での肩肘張らないやりとり、メールやメーリングリストによる意見の交換などによって暗黙知を広げていきます。これはまとまった形では表現されていない状態であり、「創出場」の自由な空間に当てはまると思います。

(2)E:表出化……暗黙知→形式知

 自分の頭の中でまとまったことを、一つのウェブログ記事としてまとめ、発表します。そして、新たなアイデアを作り出すことになります。「対話場」では、誰もが臆せず主張できる権限を持っている必要がありますが、ウェブログは、誰でも遠慮なく記事を公開できます。

(3)C:連結化……形式知→形式知

 ここがウェブログの本領発揮です。数多くのウェブログ記事の中から、関連する記事がトラックバックやコメントによって結びつけられていきます。また、ブログマップや「反応リンク集」などによって話題となっているキーワードがピックアップされます。そこから触発されて、また新たなウェブログ記事が作られていきます。こうして、様々な意見がまとめられていきます。

 これはまさに「システム場」にふさわしい環境といえるでしょう。

(4)I:内面化……形式知→暗黙知

 連結されたウェブログ記事の数々を読むことによって、自分なりの解釈や納得が生まれ、定着します。この「実践場」で知識をいかに「自分のもの」とするかは、それぞれの人の思索と実践にかかっているといえます。

 また、この「内面化」のためには「物語」が重要な方法だといいます。「物語」とは、自分自身の経験(主観的事実)を語ったり、他の人の物語を聞いたりするものです。

 そして、これはまた新たなSECIサイクルへと入っていくわけです。

 このように見てみると、SECIモデルはウェブログ界での知識創造のプロセスをよく表現しているように思われます。ただし、SECIモデルは社内など限られた空間を想定されているのに対し、ウェブログ界は境界がないところが大きな違いだといえます。会社という枠組みを超えて、ネットワークに参加できるすべての人が作り上げる知識創造のプロセスがウェブログ型SECIモデルといえるのではないでしょうか。

(※SECIならびにウェブログ型SECIモデルについての解説図版を入れる予定でした)