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ウェブログの曖昧になった境界線

※2002年10月09日 ニュージーランド・ヘラルド紙掲載記事"Blurred lines of weblogs"の翻訳です。ウェブログと仕事の微妙な関係について。



by ジュリアン・マシューズ

 7月26日、ヒューストン・クロニクル紙のベテラン・ジャーナリストが、ウェブログ、つまりオンライン日誌を運営していたために解雇された。
 スティーブ・オラフソン(Steve Olafson)はテキサス州ブラゾリア郡を担当地域としていたが、一方――上司に話すことなく――匿名のバンジョー・ジョーンズ(Banjo Jones)を使って個人的な意見と考えをブラゾスポーツ・ニュース(Brazosport News)というウェブログ上に投稿した。
 オラフソンはウェブログは単に「創造的なはけ口」だったと告白した。しかし、記事のいくつかはライバル紙をけなしたり、地元の政治かをからかったりしており、クロニクル紙の編集者ジェフ・コーエン(Jeff Cohen)の怒りを買って、オラフソンを即座に解雇してしまった。
 この事件は、勤務時間中と時間外の両方で従業員に期待されることについての興味深い議論を生み出した。

 電子メール、インスタント・メッセージ、チャット、ウェブサーフィン、テキスト・メッセージが個人のものと仕事のものとの間の境界を曖昧にさせている世界に、新しいメディア、つまりウェブログが参入してきた。
 「ウェブログ」あるいは「ブログ」は、新しいものが上に来るようにニュース、リンク、個人的意見を投稿するウェブサイトである。それは通常頻繁に更新され、ブログ読者からのすばやいフィードバックが行なわれる。

 テキサス州オースティン在住のニュージーランド人アニ・モラー(Ani Moller)は、自分の名前を付けたウェブサイトanimoller.comを5年間運営していたが、彼女のウェブログは明らかに「勤務時間後のもの」であった。
「経営者を喜ばせないことをウェブサイトに書いてクビになりたくないわ。でも、私の仕事は私のものではない。だから、それについて書くことは意味がない」
 モラーは、インターネットはやはり「完全な現実逃避」であると語る。
「なりたい人なら誰にでもなれるし、言いたいことは何でも言える。でも、面と向かってだったら言わないはずなのに、公開掲示板でだったら誰かの悪口を言ったらどうなるか、ということをみんな理解する必要がある」
 モラーは、ウェブログの最もよい部分は、すぐにフィードバックが得られる子御、新しい友達ができたことだと言う。
「私はみんなを笑わせることが好き。ウェブサイトを持てばそうできるということで、私は気持ちよくなれるし、続けようと思うわけ。ときどき、あまりよくないフィードバックもあるけど、それほど悩んだりしない。いい人たちが悪い奴より大事だから」

 賞を獲得したオンラインの文章職人で「ロビンの秘密旅行(Robyn's Secret Passage)」を運営しているロビン・ギャラガー(Robyn Gallagher)は、ブログを維持することは私生活と仕事生活の境界線を曖昧にするかもしれないけれども、そういう公私混同はこれまでもあった、と指摘する。
 ギャラガーは過去の2つの勤務先がインターネット会社だったが、勤務中のアクセスについては意見が違ったという。
「最初の会社は、スタッフがウェブサイトにアクセスし、ネットワークでチャットすることを認めていたのに、社長は、みんなが仕事に集中していないように感じたので、電子メールや会社のイントラネットへのアクセスを制限し始めたんです。2つ目の会社は仕事中に社員がウェブサイトを見たりチャットをすることには構わなかったようだけど、もしみんなの業績が落ちたらどうなっていたかわからないわ」
 ギャラガーは、ウェブログは、たいていのオンラインのツールと同様、他の人々とつながることがすべてである、と述べた。
「これは、人がなすべきことです。ウェブログを運営するのは、自分の人生に入ってくるものすべてを分類し、そして日誌のように非常に個人的に得ることができる方法なんです」

 合衆国では、イントラネットやウェブサイトにウェブログの能力を溶け込ませている会社もあり、ウェブログはすでに企業の飾りとなっているのである。その背後にある原理は、会議室でのブレーンストーミングでの会話につながっていく。
 Paul Bausch、Matthew Haughey、Meg Hourihan著『We Blog : Publishing Online With Weblogs』では、知識(Knowledge)管理に特化されたイントラネット・ウェブログである知識ログ(k-log)の構築を提案している。知識ログでは、社員は洞察、見地、資料・重要文書・電子メールへのリンクを注釈付きで公開し、それが蓄積・検索・閲覧できるイントラネット上で他の人が考えることができる。
 著者たちは、低コストで、使いやすく、ダイナミックで打ち解けたウェブログの性質は、複雑な知識管理システムよりもずっと現在の企業環境にマッチしている、と論じている。
 ウェブログは、ますます非人間的に仕切られた息の詰まる仕事場に「人間の声」を取り戻すことになるかもしれない。
 しかし、知識ログは、個人が仕事場でどのように接続すべきか、どこにラインを引っ張るかをあなたは知っているのだろうか、という問題を提起する。

 『ウェブログ・ハンドブック』の著者レベッカ・ブラッド(Rebecca Blood)は、自分の雇用者や仕事に関する機密情報・重要情報を公開する危険を指摘している。
「オラフソンさんの場合は、自分が公開した記事に当てはめていいはずのプロの基準を当てはめないことを選ぼうとしたというまずい判断の結果にすぎません」
 ごく普通の方法で、公開された言葉が自分自身にどうふりかかるかわかっているなら別だが、ブロガーは仕事についてウェブログで話すべきではない、とブラッドは書籍の中でアドバイスしている。
 ウェブログRebecca's Pocketを運営し、1998年からブログしているブラッドだが、我々はウェブログによってもう一つの「パンフレット書きの大いなる時代」に突入しているのかもしれない、という。
「ウェブログは、人民の声であり、デスクトップ放送であり、ウェブの海賊ラジオです。ウェブブラウザとインターネット接続できる誰でも、ウェブは今や双方向メディアとなっています。それは重要なことです」
 批評家は、ブログ現象など一時的流行であり、結局はウェブ上で衰退した何千というひどいデザインの内容のない旧式のホームページと同じ道をたどるだろう、と言う。ブラッドはそれに対して、ウェブログは今のようにずっと最新流行であり続けるわけではないだろうが、消えはしないだろうと述べる。
「それはどこにでもあるもの(ユビキタス)になるだろうと信じています。ウェブログを更新するのは非常に簡単なことになりました。だから、誰でもコード技能を持っていなくてもウェブ表現ができるようになったのです。新着順で並べられて頻繁に更新される形式は、実用的な目的のためにますます使われるようになるでしょう。結婚式の計画、友人や家族との交流、企業イントラネットのトップページとして」
 情報を選別し、迅速に新着記事を読者に示すために頻繁に更新される情報を整理し、詳細な情報源へのリンクを保ちながら複雑な話を要約するのに最も適したものとして、ウェブログは5年のうちに定常的に使われるようになるだろう、とブラッドは予言する。
 ブラッドはこう結論づける。「ウェブログは、人々が自分の見解を、他の誰かを喜ばせる必要なく表現できるようにする土台です。私はこれは面白く、重要な前進だと思います。今わかっているだけでも、思いがけない結果がいくつか出ています。しかし、話題にのぼるどんなツールでも同じことですが、私たちは適切な限界とは何であるか、この種の頑固な個人出版の成り行きについてまだ学びつつあるところなのです」